ナ・バ・テア


草薙水素(クサナギスイト)が主人公と分かるまで、何ページも読まなくてはならなかった。

「僕は・・」という語り口調だから、男の子が言っている感じ。だけど、キルドレの男子たちが「僕」に興味を持つあたりは、男子が女子に興味を持つのと変わりないから、後から「僕」がクサナギスイトという女性だと分かった時に、作家に騙されたような嫌な感じがする。

主人公が何者であるか分からないという気持ち悪さがある。

女性だと分かり読み進めると、一人の男性を巡る女性同士の刺々しいやり取りがあり、その直後の戦いで、恋敵が撃墜され死んでしまうあたりがとても印象に残っている。

クサナギスイトが自分を子供と言うが、ティーチャが比嘉沢を遠ざけようとする辺りは、大人の女性同士のドロドロした駆け引きのような感じだった。体つきは子どもなのに、心は大人なんだ。

そんなこんなで、クサナギスイトはティーチャの子どもを身ごもり堕胎しようとするが、ティーチャの意向で子どもはクサナギスイトから取りだされ生かされる。

比嘉沢が死んだら、死を悼みつつもそんなことになってしまうあたりが、ドロドロした大人の女性の行動だと思った。

戦闘機乗りであり続けるためには、子どもは要らないと即断し何の躊躇もなく堕胎しようとするクサナギスイトは、キャリアのために産まない選択をする現代の女性たちと同じだと思った。

・・・わたむし(妻)