ダウン・ツ・ヘブン
戦闘で負傷した草薙水素(クサナギ・スイト)は、入院し、そこでカンナミという少年に出会う。
カンナミは戦闘で撃墜され記憶を失っている。自分が誰だか名前も忘れてしまったが周りの人から「カンナミ」と呼ばれるので自分を「カンナミ」だと思うようにしている。
エースパイロットとして戦果を上げるクサナギ・スイトは、芸能人のように写真を撮られ取材を受ける。
経験の浅いパイロットに飛行についての授業をする。
受講生の中にカンナミがいた。
この本では、リアルな悪夢が描かれていて、夢と現実が入り混じっている。
カンナミは、よく見る夢をクサナギ・スイトに話す。
夢の内容もカンナミという人間像もクサナギは、まるで自分のことのように受け止めてしまう。
他人の記憶が乗移るかのような気持ち悪さが描かれていたと思う。
クサナギ・スイトは、他人にあまり関心を持たないが、自分に似たものを相手に見出すと入り込んだように自分と相手との区別がつかなくなってしまうようだ。危ないことだと思いながら読んだ。
相手の話に飲み込まれてしまい、自分を見失ってしまう危うさが描かれているのかなあ。
カンナミが話す夢の内容は、殺人について。追手から逃げる女性が疲れて死を望んでいると思い、カンナミが殺し、後を追うように自分も死ぬというもの。
「夢」をそのまま受け止めてしまうのはとても危ないことだと思った。
この作品では、人と人とのつながりが希薄で、話し合えば解決できることが未解決のまま悲劇を迎えるという点展開が多いと思った。
政治に戦争を利用しているだけであって、殺し合う理由はないのだったら、戦争をするための組織を解体すればよいのにと思う。
・・・わたむし(妻)