母と暮らせば
原爆の悲惨さが言葉で伝えられていると思った。
悲惨な映像はないけど、最後はぞっとするほど怖かった。
夫は結核でなくなり、長男は戦死。次男は原爆でなくなった。
母親一人が生き残った。
母親は心が抜け殻のようになったが、次男の恋人が支え元気を取り戻す。
そのまま生き続けるのかと思ったが、最後には痩せ細り弱って死んでしまう。
家族全員、亡くなってしまうという話。
ふむ。そんな死に方があるのかと画面をまじまじと見たのだった。
食べ物を食べなくなったら生命力がなくなって眠ったまま、夢を見たまま死んでしまう。
苦しみの少ない老衰のようだと思った。
映画を作っている人は生きている人だから、リアルの死を知らないわけだが、
母親の死に方は生々しいと思った。
そして、その死体を発見した人の「なんか おかしかよ」と言いながらも
名前を呼び続けるシーンは、経験者から聞いた話を再現しているのかなと思った。
眠った状態で心臓が動かなくなったら、きっと映画のそのシーンのように眠っているかのように見えるんだろう。
映画を見ながら、心臓が原因での突然死か、栄養失調からの死かなと思った。
映画では死の苦しみや怖さは描かれてなかったようだが、まるで死を目撃してしまったような怖さを感じた。
母親は、もっと生きたいと思わずに、喜んで死んでいった。
死ねば家族に会える。
この終わり方、「ちいちゃんのかげおくり」というお話に似ている。
空襲で家族と別れ別れになった幼いちいちゃんは、雲の上で家族に会う。
家族全員死んでしまったから、あの世で家族がそろった。
それと似ている。
実際のところ、家族とは言えども別々の人間だから、死んでから家族と語り合うとは思わない。
だって、一人で生まれて一人で死んでいくものでしょう。
あっ。そうだ。そこが「母と暮らせば」は違う。
幽霊になって現れた次男が母親と一緒にあの世へ行く。
死の世界へのお迎え人がいるから孤独ではない。
この映画で印象に残った言葉は、次男の言葉。
アメリカはラプソディ イン ブルーのような素敵な曲を作るのに、原爆も作る・・・というような言葉だった。
愛情を持つ人々が、大量虐殺も肯定してしまうということ。
素敵なラブソングを作る人が、敵対する人を憎み殺す。
人が人を殺す。
殺すとき、憎しみ嫌っているに違いない。
または、捨てるべきゴミのように思っているのかも。
殺す相手を人と思うなら殺せないだろう。
命があるとしても、尊重されるべき命とは思わず、命は命としても、
劣るものと思うだろう。
または、殺すことで相手を救うと思うだろう。
正当防衛と考えての大量虐殺かも。
とにかく、「母と暮らせば」を見て、戦争の勝者・アメリカを意識した。
・・・わたむし(妻)