れんげ荘 群ようこ

物語はふわっと始まり、ふわっと終わった。

誰も不幸にならず、極悪人も登場しない普通の日常を描いたような感じ。

普通じゃないなあと思うのは、主人キョウコが45歳で広告代理店を辞めて無職生活に入ったこと。

広告代理店の仕事は、主人公の心を破壊したのだなと思った。

仕事の内容や同僚の心根に嫌気がさし、結婚しないことを母親からネチネチ言われて嫌気がさし、

働かなくても暮らしていけるほどの貯蓄ができたら退職して家を出た主人公は、働かない生身の自分を意識しながら丁寧に暮らす。

45歳にして年金生活に入ったかのような違和感を「これでいいんだ」となだめている様子に共感した。


読んでいて感心したのは、「流され上手」という表現だった。時流に逆らうと生き辛いが、流され上手だと傷つかないで着地できるという。

確かにそうだなあと思いながら読んだ。

久しぶりに共感できる小説に出会った。


・・・わたむし(妻)