レーザーディスクのカラオケ

問注所案内所の平川さんが趣味で集めた品々を整理している。

それらの品々にレーザーディスクのカラオケがあった。

誰かもらってくれる人がいたら・・・ということだった。去年、私らが受け取った。


自治会の役員さんたちに相談して、集会所に置かせてもらった。

みんなに使ってもらおうという意味で置かせてもらったが、

最近、「ゴミ置き場のようにして・・・」という声が耳に入ってきている。



最新のカラオケ機材だったらゴミとは言われないのか?


私が20代の頃、レーザーディスクは欲しくても手が出ないものだった。

当時の職場の先輩がレーザーディスクを持っていた。

一度見せてもらったことがあった。

先輩のお子さんたちが好きなジブリのアニメを見たのだった。

映像が美しかったと記憶している。


当時、ビデオも持っていなかった。

なので、レーザーディスクを買う意欲はなかった。

そう言えば、お店でカラオケを歌うとき、レーザーディスクのカラオケだったなあ。


レーザーディスクの時代は短かったなあ。

MDの時代も短かったけれど・・・。


そうそう。

カセットテープは最近見直されていると聞いた。

我が家には、古いカセットテープがたくさんあり、私らは若いころのユーミン大貫妙子の歌を聴いている。

私は大貫妙子が好きだ。抜けた歌声がちょっと好き。


やっぱり、レーザーディスクの時代は来ないのかな?

はあぁ・・。

あのレーザーディスクのカラオケ。

公然とゴミと言う人がいる。

それは、私ら夫婦を「ゴミを置いた人」と言っているに等しい陰口とも言える。


面と向かって言われてはいないから、聞き流して置けばいいのかな?

それとも、意味ある言葉と受け取って、我が家へとレーザーディスクのカラオケを引き取ればいいのかな?


私の今の気持ちとしては、

我が家へ引き取りたいって感じが強い。

部屋を模様替えして、音楽部屋を作りたいという思いもある。

狭いから無理かな?


私は想像の中で、「ゴミ置き場にして・・・」と言ってる人に

言葉を返した。

「決して、ゴミを置いたんじゃないんですよ。カラオケとして使えるものだから、

良かったらみんなに活用してもらいたいと思ってのことなんです。

今は500円も払えばカラオケが歌える店があるので、レーザーディスクなんて使えないと言う人が

多数いるのでしょう。

けれども、これは古い時代のものだからといってゴミではないんです。

ご迷惑だったら引き取ります」


すると、相手は言う。(私の想像)

「みんな、迷惑って言ってますよ」


私は言う。(私の想像)

「そうなんですか。分かりました。

引き取ります」


相手は言う。(私の想像)

「もう、いいですか。忙しいので・・・」


私は管理人さんの所へ行く。(私の想像)

「私どもが良かれと思って置いているカラオケなんですが、みなさん迷惑だと言ってるそうですね。すみません」

管理人さんは言う。(私の想像)

「そうそう。勝手に置かれてしまって困ってるんですよ」

「そうなんですか?役員さんたちに言ってたんですが・・・」

私は、視線を落す。

「前の役員さんが了承したとしても、住民みんなは知らないことですからね。ちょっと勝手なんだよ」

「はい。すみませんでした。カラオケ、家に運ぶんで、集会所、開けてください」

「私も忙しいんで、鍵、貸しておきます。後で返してね」



レーザーディスクを運びだしていると、

「懐かしいなあ。これ、どうしたの?」

と声をかけられる。


「ああ。これ?知り合いの70代の人が趣味で持ってたものなんですよ。最近、持ち物を整理されいて、捨てるには忍びないということだったから頂いたんです」

レーザーディスクは欲しかったなあ。あの頃。なんか、バブルの臭いがするかな。時代の臭いっていうか・・・」

「そうですね。私も同感です。不思議な時代でしたね」

「ちょっと見せてもらっていい?」


私たちは、カラオケの映像を再生してみる。

石原裕次郎の歌を選んだ。

「やっぱ、裕次郎はかっこいいねえ。懐かしいねえ」

その人は、笑顔で見入っている。


「これ。どうするの?」

「みんな、カラオケ置かれて迷惑だと言ってるそうなので、家に引き取ろうと思って・・・」

「おや?私、迷惑とか言ってないよ。初めて見たし・・・懐かしいから使いたいんだけど、駄目かな?」

「ちょっと待っててください。管理人さんに相談してきます」


私は、運びかけたレーザーディスクを元に戻し、管理人さんに相談することに・・・。


管理人さんは、めんどくさいなというような表情で、「仕方ない」とカラオケ排除を猶予してくれた。


二週間後、私らは「レーザーディスクでカラオケを楽しむ会」を結成。

最初は、私と夫と声をかけてくれたあの人の3人でカラオケを楽しんだ。

「時々、やりましょうよ」ということになり、不定期でカラオケを楽しむことになる。


こんな想像をしてみた。

・・・わたむし(妻)