「昭和がお手本 衣食住」アズマカナコ著を読んで

東京郊外に住んでいるアズマさんについて、テレビや雑誌で見聞きしたことがあった。その時には、何となく反感のような嫌な気持ちが沸いていた。一か月の電気料金が500円という徹底した節電生活を見て、素直にスゴイと思えず嫉妬を感じたのかもしれない。

アズマカナコさんの著書「昭和がお手本 衣食住」を読んでみると、なぜか嫉妬心は湧かなかった。アズマさんが高齢者から昔の暮らし方を聞き取って実践しているとこの本で知り、私は興味が湧いた。

驚いたのは、明治時代の人は一杯のタライの水で全身を洗うことができたという記述。はじめに顔を洗い、次にその水で頭を洗う。水を浸したタオルで体を拭いて、最後にタライの水を体にかけるのだという。

少ない水で清潔に保つ知恵をもっと知りたいと思わせてくれる本に出合えて、私はうれしい。

歴史の本では、武将どうしの戦いが描かれていることが多いけれど、私は、戦いよりもその時代の人々の暮らしに興味があるようだ。


そういえば、子どもの頃に友だちの家に遊びに行ったときの記憶がある。そこは、製材所を営む裕福な家だった。住み込みの若いお手伝いさんがいた。その人が言ったことを思い出す。お手伝いさんの実家にはまだ電気がないとのことだった。今では、電気がないなんて考えられないけれど、私の幼少期には、まだ電気の通っていない暮らしがあったのだ。

当時にタイムスリップできたとしたら、私はそのお手伝いさんに質問したい。

「夜はランプを使っていたのですか?」


「昭和がお手本 衣食住」の本では、ソーラーランタンが紹介されている。昼間にランプに充電し、夜は電気の明かりを使わずにランタンの明かりで過ごすのだそうだ。ランプやランタンの明かりで過ごす生活に憧れるのだけど、既に電気の明かりがあるから、実践するのは難しいかもしれない。

アズマさんの家には、炊飯器、冷蔵庫、洗濯機がないという。洗濯は全て手洗いなのだ。洗濯機の黒かびと無縁の暮らし。

私も学生の頃には洗濯機なしの生活をした。タライと洗濯板を使って洗濯していた。毎日下宿の洗い場の冷たい水で洗濯していると、「いつも洗濯しているね」と、先輩たちから冷やかされていた。私は、コインランドリーにお金を使うのがもったいなくて手洗いしていたのだけど、冷やかされると堂々と洗濯できなくなったのを思い出す。

この「昭和がお手本 衣食住」は、私の昔の暮らしぶりを肯定する内容だと思う。

良い本に出会えたなぁ。


・・・わたむし(妻)