容疑者Xの献身
弁当屋で働くシングルマザーとその娘が住むアパートに、
乱暴な男が入ってくる。
この男から、母子は逃げてきたのだが、居所を知られてしまった。
パニックになる母子。
男の後頭部を娘(?母?)が殴る。男はひるむが母子を襲おうとする。
とっさに、母と娘は、電気コードで男の首を絞めて殺してしまう。
私は、この殺人シーンが生々しく感じられた。
急所である頭を殴れば、もうそれだけで人は死んでしまうかもしれないのに、
首まで絞めて、確実に命を奪おうとしたからだ。
その場から逃げて、周りの人に助けを求め、警察を呼んだらいいんだ。
話の都合上、そこで男が殺される必要があるから、
都合よく殺されてしまう。
ミステリー小説では、人が殺される場面が欠かせないのだろうけど、
非力な女性二人が、力を合わせて男を殺す様子に、とても嫌な感じがした。
人を殺そうと思わないなら、逃げることだけ考えるだろう。
外に出て、大声で助けを求めたら誰かが通報してくれるだろう。
最も近い交番から、5分以内に駆けつけてもらえるだろう。
容疑者X・・にならず、通報者Xになったかも。
ミステリー小説のファンは、そういう平凡なストーリーを好まない。
刺激的な残忍なストーリーが売れるだろう。
人を殺すために力を合わせる話を、子どもには勧めない。
そして、この話では、ホームレスの男性が、証拠隠滅のために殺されてしまう。
容疑者Xは、このホームレス男性を恨んでいたのではない。
関わりのない人を殺してしまえる心理は、この作品では描かれていなかった。
殺されたホームレス男性は、自分の身に何が起こったか考える時間もなく死んでいる。
・・・わたむし(妻)