「こちら あみ子」今村夏子

主人公あみ子は、発達障害とは書かれていないけれども

こだわりや思い込みが強く、その場にふさわしい言動を選べない様子が

書かれている。

で、あみ子の視座で、断片的にエピソードが書かれている。


中学でのいじめの様子が多く書かれている。

「キモイ」と避けられる。上靴を隠される。

好意を寄せる相手から、前歯が3本も折れてしまうような激しい暴力を受ける。

あみ子には、いじめに対抗する気持ちすら湧かない。


終盤で、小学校のいじめの様子が書かれている。

泣いているあみ子の泣き顔が面白いと言って、周囲の子が爆笑している。



気ままに行動し、場にふさわしい行動がとれないあみ子であるが、

心根はとても優しい。

しかし、作品中に出てくるあみ子の大事なおもちゃ・トランシーバーのように

あみ子は気持ちが伝えられないし、周囲はあみ子に大事なことを話さない。

学校では、心のない存在としていじめられる。


この本を読んだのは、ラジオ番組「メロディアス ライブラリー」で紹介されていたからだ。

番組中では、「激しい暴力」という表現であみ子が前歯を失ってしまうエピソードが語られていたけれども、

読んでみると、まるで殺人場面のように惨い場面だった。


話の最初と最後に、あみ子と友だちとの交流が描かれている。

あみ子は、友だちのためにスミレをスコップで掘り採り、袋に入れる。


野の花やスミレのエピソードが友情を象徴しているから、

この本の装丁に、すみれ色で野の花のイラストが描かれているんだろう。


・・・わたむし(妻)