シュガーレス ラヴ

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ラジオドラマの中で紹介されていたのを夫が聴いて、夫が興味があると言っていたので図書館から借りて読んだ。

ラジオドラマでは、イルカ療法について語られていたそうだ。

青い海と可愛いイルカ・・・その印象に惹かれて読んでみたいと思ったそうだ。



夫より先に私が読んだ。

夫は、「イルカ療法」の作品だけを読んだようだ。

思っていた話と違っていたようだ。


粗筋と感想を書いてみよう。

確かに、「イルカ療法」の話には可愛いイルカが出てくる。

が、話としては陰鬱な惨いものに感じられた。

主人公は、元小学校の教師。女性。突発性難聴を患っていて片耳が聞こえづらい。

主人公は自分のことを善良な人間だと思っていた。大抵の人間がそうなんじゃないかな。

主人公は、欠席の多い家庭の悩みを抱えた子の力になろうと思って接する。

しかし、その子は教師からの接近を拒む。

関わりの中で、主人公はその子がいじめをしていることを知り、止めさせようとする。

ある時、事件が起こる。

テストを返却する時に、主人公は「もっと頑張らないとね」とその子に言う。

頑張れという言葉は鋭い刃物のようになる。売り言葉に買い言葉のような交錯した言葉の遣り取りになり、

その子は、主人公の最も弱い所を突く。

主人公は我を忘れてその子を殴り、懲戒解雇される。

恋人も去り、ただ1人静かに暮らしている。

静かな暮らしの中の、彩りある時間が水族館通いだ。



子どもの心の弱さを題材にしているのではなくて、

人の持つ攻撃性を題材にしたのだろう。

「いじめ」は、身近な人の中に弱さを見つけ出して、その弱さにつけ込む行為だ。

身近な弱い者を支配して、自分の問題から目をそらしている。

自分の問題を見たくないから、「いじめは良くない、止めなさい」と注意されても止めることは出来ないのだと思う。

いじめ対応に1人で関わるのは無茶なことだ。

自分に止めさせる力があると過信し、1人で抱え込んで、

子どもからの弱さを突く刺激に反応して自爆した主人公の様子が

とても惨いと思った。

大人だけが攻撃性や邪悪さを持っているのではなくて、

子どもにもあるんだし。いじめを止めさせようとする教師にもあるんだよね。

自分は善良な人間だと信じて疑わなかった主人公が、自分の攻撃性に打ちのめされた話なんだな。

ただ、話の終わりには、微かに光のようなものが見えている。

その場がイルカと出会った水族館。

イルカという生き物を見て、イルカについて話すことで

痛いところを突くような攻撃的な話とは別次元の関係が育まれていく。

惨い話だと思ったけれど、タイトルの「イルカ療法」のように、

心が救われる話だと思った。


・・わたむし(妻)