あなたの人生、片づけます  垣谷美雨

「あなたの人生、片づけます」には、4つの短編が収められている。

最初の話が印象に残っている。


社会人になって不倫に巻き込まれた女性の部屋が、ゴミ部屋になっている。

不倫相手の男性は、主人公と不倫関係にある上に、次々と別の女性と不倫する。

なのに、家庭はしっかり守っていて、会社でもうまく立ち回り出世する。


主人公は、ずるずるとゴミ出しを先送りにして、

部屋は悲惨な状態。

会社で、そんな私生活を悟られないようにしているが、

両親が管理人に部屋を開けてもらい、主人公の汚れた部屋を見てしまうとこから、

話は展開していく。


人に知られたくない秘密を抱えることと、部屋を汚してしまうことに何か関係があるのかと思いながら読み進めていると、

秘密を抱えることより、人に嫌われるのを恐れて本当のことを知ろうとしない主人公の優柔不断さが問題なんだなあと思った。

不倫相手に飽きられないよう、嫌われないようにするあまり、自分の思いを蔑ろにし、

自分がどんな生活をしたいかが見えなくなって、

好きでもないものを買ってしまい、

それらがゴミになってしまう。


片付け方を指導する十萬里さんは、主人公が自分の気持ちに気づいていくよう、

寄り添っていた。



テレビの片づけ番組では、ゴミ部屋の住人を「だらしない人」と言うだけだが、

「あなたの人生、片づけます」の第一話では、

そうならざるを得なかった経緯が丁寧に描かれていて、

共感しながら読み進めた。


第四話も印象深かった。

中学生の息子を交通事故で失った女性が主人公。

無気力になり、夫や娘たちに思いを巡らすことさえ出来なくなっていて、

家の掃除もできなくなっている。

十萬里は、子どもを亡くした親の気持ちを理解しようと努力する。

埋め合わせのできない喪失と悲しみを抱えて生きていくのだと自覚した主人公は、

元気さを取り戻していく。

十萬里は、主人公の家がキレイになっていくのを想像して喜ぶ。


第四話では、子どもを失う悲しみについて思いを巡らせることができた。

どんどん時間は過ぎていくのに、主人公の心は止まったままなんだなあ。

いじめや犯罪の被害にあった人も、同じような心境になるんじゃないかと思った。

悲しみを抱えて生きるには、仲間が必要なんだと第四話は教えてくれている。


・・・わたむし(妻)