バスを待つ間の雑談
杷木のバス停で天神行きの高速バスを待っていると、知らない女性から話しかけられた。
「おたくは、どこまで乗るんですか?」
私は「筑紫野です」と答えた。
ただの暇つぶしの雑談だと思い、私は答えた。
「あなたは何の用事でここへ?」
「そこのピアノ教室に来ているんです」
「バスで通っているんですか?」
「はい」
「うちの子もピアノ買って習っているんですが、あんまり練習はしてないみたい。やっぱり毎日練習はした方が良いのでしょ?」
「・・・毎日した方がいいんでしょうね」
私は質問に答えるばかり。
発表会の時期についても訊かれた。聞かれるがままに答えたのだが、相手の言葉で一つピンとこない言葉があり心に引っかかった。
私はヤマハの教室に通っているのだが、その方のお孫さんであろう子どもは「とうほう学園」で習っているとのこと。
後でとうほう学園を調べた。
とうほう学園は、多分「桐朋学園」だろう。小学部からあるようだ。プロを目指すような人が通う名門。
新垣隆さんの母校。
その女性には、名門桐朋学園でピアノを学ぶお孫さんがいるのだな。
昨日の雑談で、「スゴイですね」と言えたら良かったな・・・。分からなくて反応できなかった。
桐朋学園の小学校に入学するときに、40万円振り込まなくてはならないのだと知り、私立の小学校に通えるというだけでもスゴイことだなと思った。財力があるんだから・・・スゴイ。
自分と比べる必要はないのだが、自分にはできないことだと比べてしまった。
ちょっと寂しい気持ちになった。
ふと、ネットの掲示板で関東地方に住む女性とやり取りしたのを思い出した。
彼女は、私の子どもの学校が公立なのか私立なのか尋ねてきた。私は公立だと答えた。
彼女の子どもは私立だと言った。
中学受験はしないのかと訊かれ、しないと答えるとやり取りは途絶えたと記憶している。
価値観が違うから親しいやり取りにならなかったのだろう。
そういえば、私立の小学校が昔より増えてるなあ。
どんな人がどんな価値観を持って子どもを通わせるのだろう。
公立と言ったら見下されたように感じた掲示板のやり取りを思い出したが、実際のところ、やはり、公立では得られないものを求めて私立に行くのだろう。
図書館で借りた家事関係の本で、たまにキレイに洗濯された子どもの制服の写真を見ることがあるが、私立の小学校なんだろうと思うのだ。そして、少し反感を抱いてしまう自分だ。
バス停での雑談で、「うちは桐朋学園・・」と言われたときに、意味が分からなくて良かったかもしれない。分かっていたら、私は眉間に皺を寄せていたかも。言葉では「スゴイですね」と言ったとしても、表情は違うものになるだろう。
どうやら、私は貧富の差を感じて妬む心の癖があるようだ。
・・・わたむし(妻)