灰色のカラス

昨日、実家へ行った。

不思議な話を聞いた。


昨日の朝、実家では気味が悪いほど複数のカラスの鳴き声が聞こえたそうだ。

何事かと見に行くと、カラスたちが家の上を鳴きながら飛んでいたという。

そして、その中の1羽が落ちてきた。カラスたちはしばらく、グルグルと旋回しながら鳴いていた。

落ちた1羽に近づくと、怪我をしたのか動かない。

「かわいそうに。カラスは死にかけているのかもしれない」と私の父は思ったようだ。

父が言うには、そのカラスは灰色。

珍しいと思ったので私は見に行った。


カラスは田んぼでじっとしているという。

私はあぜ道を歩いていった。

確かに、灰色の鳥がいるようだった。

大きさは、カラスと同じくらいだった。

目は赤茶色。くちばしは大きい。足は黄色い。

ぅぅぅぅん?これはゴイサギではなかろうか。

けれど、父は「灰色のカラス」だと思っているようだ。なんと言おうか?


思い遣りのある優しい言い方が思い浮かばず、ストレートに「これはカラスじゃなくて、ゴイサギじゃないかな」と言ってしまった。

重ねて、「ゴイサギがカラスにやっつけられて落ちたんじゃないかな」と言った。


珍しい灰色のカラスがいるというファンタスティックな話は、私の言葉で終わった。

もしかしたら、私のいつもの物の言い方で父を傷つけてしまったかもしれない。


・・・わたむし(妻)