「忘れパスタ」という柚木麻子さんのエッセイを読んで

日経新聞の柚木麻子さんの「忘れパスタ」というタイトルのエッセイを繰り返し読んでいる。



忘れパスタとは、食べたそばから忘れてしまうような、印象に残らないパスタのことだそうだ。決してまずいパスタでも安っぽいパスタでもなく、びっくりしない味わいで、量がちょうどよくて口当たりがよい。

不快な要素がないパスタだから、食べながらの会話を邪魔しないのだそうだ。

エッセイでは、パスタから映画にも話が発展し、「実は人を不安にさせないよう考え抜かれているものとは、なにげなく見えて、いずれも温かくて品があり優秀で知性にあふれている・・・」というようなまとめがされている。

なるほどと思いながら読んだ。


不味い料理は、味だけでなく店の内装や接客なども記憶に焼きつけられてしまうという。不快な記憶として忘れられなくなるという。なるほど。不快感は心の傷にもなるのだな。

忘れられない事柄が、「いいものとは限らない」というのにも、私は心の中で「なるほど」と言った。


過去を思い出す時に、嫌なことが思い浮かぶのがコンプレックスだけど、「忘れパスタ」という柚木さんのエッセイを読んで、自分だけじゃないんだと安心した。

嫌なことが強いインパクトで思い出され、良かったことを隠してしまう。嫌なことを引き起こす人の悪意には、そういうダークパワーがあるんだな。善意や思いやりは目立たないのだ。

努力、頑張りが人の目に付きにくく、「頑張っているね」とか「ありがとう」とかと言われなくて良いということだな。

忘れられているからといって、駄目じゃないんだな。

必ずしも人に覚えられてなくて良い。


このエッセイは、家事のやる気を引き出してくれる内容だと思った。

・・・わたむし(妻)