ギリシャ神話のミーノータウロス②

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ギリシア神話」著者・呉 茂一 新潮社
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
抜き書き・・
 
 ところがこのように美しい牡牛を手に入れると、ミーノースはこれを贄にするのが惜しくなって、
 
ポセイドーンには他のありふれた牛を献げ、その牡牛は牧場に送って自分の物とし、神々への誓言を反故にしてしまった。
 
 これに対して当然ポセイドーン神は、激しい憤りをもたれ、報復として彼の妻であるパーシパエーに、
 
その牡牛に対して自然でない、しかも抑制しえないような恋慕の情をひき起こさせた。
 
・・・略・・・・
 
パーシパエーは密かに彼(ダイダロス)を招いて胸中を訴え、何とかよい手段はないものかと懇請した。
 
王妃に取り入るよい機会を見つけたダイダロスは一議に及ばず、さっそく知恵を絞って王妃の望みを遂げさせる仕組みを考え出した。
 
それは木の板を組み合わせて、牛の形につくり、それに本物の牛の皮をかぶせたものであった。内はずっと胴がうつろをなし、
 
人が入る十分な広さをもって、背にとりつけた蓋から自由に出入りができるようになっていた。
 
足には車輪を付け、綱で自在に牽いてゆかれる。
 
そして、この人造の牝牛にパーシパエーを潜り込ませて、これを例のポセイドーンの牡牛がいる牧場へと、
 
頃合をはかって牽いてゆかせた。牡牛はこれを本物の牝牛と思って挑みかかり、王妃は胸の思いをはらすことができた。
 
 こうしてダイダロスは王妃の信任にあずかりえたが、好事魔多しとやら、パーシパエーは月日の巡りにつれ、
 
ついに一人の怪しい子供を産むことになった。
 
それは人間の体で牛の頭をもった嬰児で、ミーノースの養父にちなんでアステリオスと名づけられたが、
 
一般にはミーノース王の牛、すなわちミーノータウロスと呼ばれていた。
 
 
・・・わたむし(妻)