おしゃべりを注意する人

高速バスに乗って、のんびりと乗客の楽しそうなおしゃべりを聞いていた。

おしゃべりしていたのは、

和服姿の高齢の女性二人連れ。

華道や茶道をする人かなあ、和服は上品に見えるなあ、

和服はお金がかかるけれど、憧れの気持ち、あるかも・・・などと思った。


二人のおしゃべりは聞こえていたが、

その内容までは分からなかった。

ただ、楽しそうという感じはした。

多分、私の知らないことを話していたから内容がつかめなかったんだろう。


楽しそうな感じは、ここちよく伝わってきた。

しかし、雰囲気は一瞬で消えた。

私のすぐ後ろに、おしゃべりの声を落とすよう注意する人がいた。

注意の声が鋭く感じられ、私は自分が注意されたみたいに体が震えた。


女性たちは、おしゃべりを止めてしまい、

バスはシーンと静かになった。


帰宅して、じわじわと腹が立ってきた。

あのおしゃべりは、そんなに大声ではなく、

私には、不快でなかった。

むしろ、話し声が少しはある方が、場が和む。

誰かが誰かを叱るなんて、嫌な感じだった。


人が注意される様子を見ると、不快というより怖い。

安心してバスに乗っていたのに怖さを感じ、びくびくしてしまった自分を思い出し、

安心を脅かされたことに対して怒りを感じたようだ。


高速バスに乗っていると、何度か、

「声を落としてください」という注意を聞く。

なぜ、そんな注意をしなきゃならんのだろう。


高速バスには観光客とビジネス利用の客が混在している。

外国人観光客は、ちょっと声が大きいが、誰も注意しない。

高齢の旅行客らしい人たちも会話は弾むようだ。

なぜか注意されるのは日本人の高齢者。


注意する人は、やはり人を選んで注意するのだろう。

・・・わたむし(妻)