「おわり」のマーク

部屋の奥の物入れから荷物を出して、

ミニ箒で埃を払い、化学雑巾でぐるりと拭いた。

閉め切っていたから、どんなに汚れているかと恐れていたが、

汚れはそれなりだった。

虫の死体なんかはなく、埃汚れだった。


湿気取りのシリカゲルは黄色くなり、もう使えない状態のようだ。

防虫剤も、「おわり」と表示が出ていた。


いつ「おわり」になっていたんだろう。

随分前に防虫剤としての命は終わっていただろう。

もう、死んでいたんだな。


シリカゲルも防虫剤も死んでいた。


「掃除を計画的にやってなく、大掃除もいい加減だからこんなことになるのだ。無能なのね」

自分を責める内なる自分が発動した。

「後回しにしていたところを今日、掃除できて良かったよ」

傷薬を塗るように、自分に言い聞かせた。


それにしても、防虫剤に「おわり」と表示されるのは良いことだなあ。

明日にでも新しいのを買ってこよう。


「なぜ、今日買わないの。後回しにして。家事さぼってんじゃないの」

再び内なる攻撃の声が聞こえる。


・・・わたむし(妻)