他人の会話を聞く

「ここは観光と書かれているのに、観光の本がないのは何故なんですか。理由を知りたいです」

図書館で高齢の男性がスタッフに話していた。

スタッフは、担当の者を呼びますと言って去り、すぐに担当者がやって来た。

すると、高齢男性は同じことを言った。


興味深いやり取りだなあと思い、私は聞き耳を立てた。

本の分類がいい加減なのではとのクレームだろう。

最近、クレームが話題になっているので興味を持ってやり取りを聞いた。


「理由を知りたいです」との言い回しに、担当者は、「ご指摘ありがとうございます」と言うと、

急に高齢男性の口調は丸くなった。

担当者は、本を入れ替えますと言った。

高齢男性から、嬉しそうな笑いがこぼれた。





読みたい本が見つけられないときは、図書館スタッフに尋ねる。

本棚を案内してもらえるし、書庫から出してもらえたりもする。

他の図書館から取り寄せてくれたりもする。

調べたいことを告げると、関係ある本を探し出してくれたりもする。

図書館の人たちは、かなり親切て優しいと私は思う。


月に2回くらいしか図書館へ行かないから、不満はあまりない。

ただ、図書館の椅子に座って本を読むと緊張する。

空いている椅子が少ない。私が座っている椅子は、誰かの指定席なのではと思ってしまう。

なので、さっさと本を借りて帰り、家でゆっくり読む。


図書館という施設に深く関心を持たず、自分の居場所にもせず、浅く付き合っていると、

不満も少ないようだ。

期待が少ないから不満も少ないのだろう。


筑紫野市に引っ越してきて、生活圏のことがらについて分かるようになってきたが、不満はない。

ずっと長く住むつもりだが、まだそんなに地域に愛着はない。

地域愛が少ないとも言える。

地域に居場所はないが、家でゆっくりできるから良いと思う。


家以外の居場所がないのは、すこし寂しいが仕方がない。

ただ、図書館などの施設を利用すると、

そこを居場所にしている人たちの会話を聞くことはできる。


会話を聞くというやり方で、私はそれらの人間関係の周辺にいる。

・・・わたむし(妻)