迷い犬の記憶
昔、小学校で働いていた頃、5時間目が終わろうとしていた時間帯だったと思うけど、
学校の中庭に犬が迷いこんでいた。
犬恐怖症の私は、犬が気になって仕方がなく困って職員室へ行った。
迷い犬を何とかできないものかと教務主任にお願いしたが、それがどうしたくだらないことを言いに来るなと突っぱねられた。
そのやり取りを聞いていた年配の女の先生が、「困って来てるんじゃないですか」と言葉を挟んだ。
でも、どうにもならず私は教室へ戻った。
去年、東野圭吾の短編集に犬恐怖症の教師が登場する話があった。
その話では、犬恐怖症の教師は死んでしまうんだけど、犬が怖い人が重要人物として描かれていることに気持ちが救われた。
世の中には、犬が怖い人間もいるんだぞと分かってくれる人もいるんだと思えて、ちょっと嬉しかった。
あれ?なんというタイトルの本だったかな。
小学生向けに書かれたミステリーだったと思うけど。
「おれは非常勤」という本だった。思い出した。
今の自分が昔の自分を手助けできるとしたら、
迷い犬を呼び寄せて、ちょろちょろと動き回らないように繋ぐだろう。
今は、昔ほど犬が怖くないから出来るかもしれん。
・・・わたむし(妻)