蚊帳

耳元で、プーーンとモスキート音がした。
 
思わず、手で振り払った。
 
刺された後だった。
 
 
悔しい。血を吸われた。
 
痒がる私を見て、夫が言った。
 
「お前の血を吸うなんて、なんて蚊だ」
 
夫は面白がっているようだった。
 
 
昔、蚊帳を吊って眠っていたのだと娘に話したが、
 
通じなかった。
 
娘は蚊帳を見たことがない。
 
「蚊が入ってこないように、細かい網のようなものを張ってその中で寝ていたよ」と言い換えたが、
 
「それは、ハンモック?」と娘は認識していた。
 
「違う。ハンモックじゃなくて、蚊が通り抜けないくらいに細かく風を通すネットを部屋中に張っていたの」と、さらに言い換えた。
 
娘は首を傾げた。
 
「蚊帳」を説明できず、撃沈。
 
 
・・・わたむし(妻)